メモの整理という永遠の命題

メモが溢れかえっている。

メモが好きで、学びや思いつきがあると逐一書いている。メモにはスマホやPCを使い、クラウド保存している。便利だ。ほんの数年前までは紙に書いていた。デジタルはいくら書いてもかさばらないし、クラウドならどこでも書けてどこでも見られる。思いつくままに書き、分類もせずぶち込む。

そんな快適な日々を送ってきたが、ふと見渡すと、膨大な数のメモが横並びになっている。エントロピーという言葉が頭をよぎる。

メモの無秩序は日々増大し続け、目当てのメモを探すことが難しくなってきた。内容の重複も目立つ。どげんかせんといかん、この無秩序なメモを整理しなければ。

しかしいざやってみるとすこぶる難しい。メモをどう整理するか。我々に課せられた永遠の命題のように思える。

最初に思いついたのはカテゴリーで分類する方法だった。どんなカテゴリーを作れば綺麗に分類できるだろうか。

試行錯誤①:学問による分類

まずは学問での分類を試みた。

が、そもそも学問の分類に定義がないらしい。まじか。

学問には明確な分類法が存在せず、国や地域、教育機関ごとに差異があるとのことで、大まかな分野を分けるだけでも以下のようなものがある。
参考:学問の一覧 -Wikipedia

  • 理系/文系
  • 形式科学/自然科学/社会科学/人文科学
  • 基礎科学/応用科学
  • 実学/非実学
  • 経験科学/形式科学

そしてそれぞれの分野に下位分野(物理学、医学、法学など)があるわけだが、どれをどの上位分野に入れるかもケースバイケースらしい。むむ。

さら厄介なことに、学問で分類しようとすると「こうもり問題」に道を阻まれる。

こうもり問題

「対象がAにもBにも分類できる場合どうするのか?」という問題。こうもりが鳥か獣か曖昧なことに由来しているらしい。

例えば心理学を用いたマーケティング手法のメモがあったら、このメモは心理学と経営学どちらにいれるのか、となってしまう。

学問同士は多かれ少なかれその領域が部分的に重なり合う存在であり、複雑系科学などのように分野横断性の強いものも多い。この話は○○学、と明確に分類できるものではなさそうだ。

というわけで、学問での分類は不採用となった。

試行錯誤②:図書分類法による分類

私は諦めない。学問がだめなら図書分類法はどうか。偏執狂の執念をなめるな。

図書分類法は実際に図書館などで運用されているものだ。世界共通でこそないが明確に定義されているものなので、これなら強制的に分類できるはず。

日本十進分類法という、日本の図書館で広く使われている図書分類法でメモの分類を試みた。日本十進分類法はまず10個の第1次区分がある。

0.総記、1.哲学、2.歴史、3.社会科学、4.自然科学、5.技術、6.産業、7.芸術、8.言語、9.文学

第1次区分それぞれに第2次区分、第3次区分と続いて3桁で表すのだが、メモの分類であれば第2次区分までで十分そうである。

学問と違いこちらは明確な分類定義があるし、メモの元ネタが本の場合は国立国会図書館サーチで検索すれば既に分類されている。

試してみたところ、こうもり問題は回避できた。だいぶ強引ではあるが。

しかし分類が細分化されすぎて、とんでもなくわかりづらい。また、あくまで図書の分類であって知識の分類としてはしっくりこない箇所も多く、分類はできても役に立たないと感じる。

一度冷静になろう、迷走している感が否めない。いちいち国立国会図書館サーチで調べるなんて労力が現実的じゃない。私は楽に生きたい。

というわけで、図書分類法での分類も不採用となった。

階層構造で分類することの欠点

知識を階層構造(カテゴリー)で分類しようということ自体に無理を感じてきた。

  1. こうもり問題:階層構造である限りどうやっても直面すると思う。無理やり分けても、分類の難しいメモで手が止まるのは面倒だし、あとでどこに分類したのかがまず思い出せない。
  2. メモの分類が後で変わる:自分にとってのそのメモの意味合いは、知識や状況とともに変化または追加されていくもののようだ。自然科学のメモだったものが、ビジネスとして重要なものになったりする。

自身の目的ベース(仕事、趣味、自己啓発など)での分類などいろいろ試してみたが、どんな分類であっても上記の問題は必ず直面した。

採用:ネットワーク構造(Zettelkasten)

階層構造に無理を感じた結果、行きついたのがZettelkasten(ツェッテルカステン)という情報管理システム。メモを相互にリンクさせるネットワーク構造のメモ術で、「分類しない」というちゃぶ台を返すよう答えである。

ニクラス・ルーマンという社会学者が実践していたメモ術で、当時は紙のカードにメモして数字を振り、相互にリンクさせていたらしい。いつの時代にも偏執狂というのはいるものだ。私は21世紀の偏執狂なので、ハイパーリンクでこれを実現する。

Zettelkastenのルールはいろいろあるが、とくに重要そうなのは3点。

  1. カード1枚に1アイデア、内容を完結させる
  2. カードは他のカードとリンクさせる
  3. 構造を気にしない

私はシステムエンジニアを生業にしているのだが、顧客にシステムに対する考え方を説くときはいつも「建築よりはガーデニングに近い」と謡っている。「設計→開発→完成」ではありません、わが子のように日々慈しみ健やかに「育て続ける」のです、だから予算をよこしなさい、と。

Zettelkastenを知り、メモも同じと考えるにいたった。育て続ける。そのために有効なのは、階層構造による分類よりもネットワーク構造によるリンクのようだ。メモの増加とともに増大するエントロピーは、十分なリンクによって対応できる。

メモやノートは事前に設計する構造物ではなく、ノードとリンクの増加によって有機的に成長していくニューラルネットワークのようなもの。Zettelkastenを経て私はそう捉えている。

「構造を気にしない」と書いたが構造を付与することもできる。ZettelkastenにはStructure Noteという仕組みがあり、必要に応じてカードのリンクを集めて構造を作ることができる。構造がなくても有用だが、知識として体系的にとらえ理解するには部分的に構造が欲しくなる場面はある。

ちなみにZettelkastenは普通のメモアプリでは実現困難だったので、Obsidianというアプリを導入している。 こちらの導入方法はいずれ別の記事にまとめようと思う。 私のObsidian設定はこちらの記事にまとめている。