HIROTA YANO
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ジョジョで学ぶ「描写」と「説明」の違い

小説においてはよく「描写」と「説明」という概念が議論されており、「これは説明になっているから描写にしなさい」と小説好きはなにかと描写の重要さを説く。

ところが「描写と説明ってなにが違うの?」と問えば「定義はない」「つまり純文学」「考えるな、感じろ」などと途端にフガフガ言い出すのが常である。どげんかせんといかん、私が明確な答えを作ろう。ありのままを話すぜ。

描写 = ザ・ワールド
説明 = キング・クリムゾン

これで解決だ。

問題があるとすればザ・ワールドとキング・クリムゾンの違い自体が非常に分かりづらいことと、ジョジョの読者以外を全く相手にしていないことか。ジョジョを読んだことがない方はとりあえず三部と五部だけでも読んでから先に進んでほしい。

本稿は「描写と説明」「ザ・ワールドとキング・クリムゾン」という二つの分かりづらい概念をまとめて理解できる、非常にお得な記事である。

なお、本稿は私の勝手な解釈であり、とくにジョジョについては公式の設定でもなんでもない。なるほどそう捉えることもできるのか、程度に聞き流して理解の一助にしていただければ幸いである。

さて、小説は「文章を通して物語を伝えるもの」と言える。

そして小説の文章は大きく「場面」「描写」「説明」の三つに分類できる。描写と説明の違いがわからないと言っているところに場面という新キャラをぶち込んでしまったが、どうか怒らないでほしい。この三つは違いを比較することでそれぞれを理解できる。

場面、描写、説明の違いは「時間のコントロール」にある。どうだろう、一気にジョジョ感が出てきたのではなかろうか。場面、描写、説明を使い分けることによって、文章は物語の時間経過を操るのだ。

場面

場面は「物語の時間経過をそのまま」伝える文章であり、たいていはキャラクターのセリフや行動をそのまま書くことで表現できる。

文章量 = 物語の時間経過」になる書き方だ。

小説における場面

これはスタンドによる時間操作を行っていない通常の状態であり、キャラクター全員が物語側にいる。

場面は通常の状態

描写 / ザ・ワールド

描写は「物語の時間経過を圧縮して」伝える文章であり、大量の文章で詳しく伝えるが物語はほぼ(あるいは全く)進まない。五感の情報や比喩を駆使して一瞬の情景や心理を詳細に記し、感情移入させたり臨場感を出したりする。

文章量 > 物語の時間経過」になる書き方である。

小説における描写

ザ・ワールドは「時を止める」。

これは文書における描写に通じるものがあり、DIOだけを文章の世界に移動させると捉えることができる。能力を発動すると物語(DIO以外の世界)は一切進まないが、文章(DIOの世界)は好きなだけ書くことができる。そしてその文章を認識できるのは、文章の世界にいるDIOのみである。

描写はザ・ワールド

説明 / キング・クリムゾン

説明は「物語の時間経過を省略して」伝える文章であり、長い時間を少ない文章で伝えることができる。例えば「百年後」と書けばそれだけで物語は百年進む。

文章量 < 物語の時間経過」になる書き方である。

小説における説明

キング・クリムゾンは「時を消し飛ばす」。

これは文書における説明に通じるものがあり、ディアボロ以外を文章の世界に移動させると捉えることができる。能力を発動すると物語(ディアボロの世界)は進むが、文章(ディアボロ以外の世界)には結果しか残らない。消し飛んだ過程を認識できるのは、物語の世界にとどまるディアボロのみである。

説明はキング・クリムゾン

ポルナレフにとっては①の次には⑤という結果しか残らない。

あと書いていて気付いたがポルナレフは階段に近づかない方がいいと思う。

あとがき

描写と説明の違いを説くとみせかけてジョジョに軸足をおいてしまった感はあるが、よしとする。

なお、メイド・イン・ヘブンについてはさっぱりわからない。永劫回帰が元ネタだろうとは思うが……、プッチ神父、あなたは一体なにをなさっているのですか。