尿の役割と進化

今日はヒマだったのでおしっこについて勉強していたんだが、どうも、私はいままでおしっこを軽んじていたようだ。漠然と「余った水分を捨てている」程度に考えていた。

おしっこの役割は大きく二つある。

  • 浸透圧の調節
  • 老廃物の排出

前者は余った水分を捨てるでまぁ間違っていないようだが、水分を捨てたいよりも体液の濃度を一定に保ちたいと言った方が正しそうだ。

おしっこに対する観念を大きく変えられたのが、後者の老廃物の排出である。老廃物とは、主に窒素のことである。

窒素というと「空気の使わないとこ」みたいな雑なイメージしかなかったが、タンパク質などを分解する際にもっとも単純な窒素化合物であるアンモニアとして生成されるそうだ。これは生物にとって毒性が高く、ちゃんと捨てないと命に関わるらしい。

アンモニアがおしっこに含まれていることは、小学校で教わった。しかし小学生男子という生き物は「おしっこ」という単語だけで面白くなってしまう存在なので、アンモニア=おしっこ=面白いという方程式を勝手に組み立てアンモニアを軽んじてしまう。なんか下品で取りに足らない化合物、私のアンモニアとの向き合い方はそんなものだった。命に関わるものを面白がるんじゃない。

アンモニアは水溶性なので、水に溶かさないとうまく捨てられない。このアンモニアの捨て方が動物によって異なる進化を遂げており、とても面白い。

アンモニアの捨て方

魚類の場合

水中に生息する魚類の多くは、アンモニアをそのまま水に溶かして排出している。彼らは水を無限に使えるので、とくに工夫する必要もないようだ。エラから捨てているらしい。

哺乳類の場合

陸に上がった動物は水が貴重なので、ある程度溜めて一気に捨てるよう進化した。

  • 溜めるにはアンモニアでは毒性が強すぎるので、腎臓で毒性の低い尿素に変換してから溜める。
  • しかし尿素はアンモニアより水に溶けにくいので、たくさんの水が必要になる。

水を節約するために水をたくさん使わなくてはならないという、なんともやるせない仕様である。哺乳類は今のところこの状態であり、後述の鳥類・爬虫類と比べて水を大量に必要とする。

鳥類・爬虫類の場合

鳥類や爬虫類は尿素では都合が悪い。卵のなかでは排泄ができないため、尿素が溜まり続けてしまうのだ。尿素は毒性こそ低いが、水に溶かすので浸透圧が高くなりすぎるという問題が起こる。浸透圧が高くなると、雛は卵の中で干乾びてしまう。

※浸透圧が高い:すごくざっくり言うと、水溶液が半透膜(水だけ通す膜)を挟んで濃度に差があると、濃い方に水分が吸い取られてしまう。ナメクジに塩をかけると縮むのがそれで、表面の濃度が高まり体内の水分が吸い取られ干乾びてしまうのだ。かなり残酷なのでやめてあげよう。

そのため鳥類や爬虫類はアンモニアを尿酸に変換するように進化した。尿酸は尿素よりさらに毒性が低く、さらに水に溶けにくい。というかほぼ溶けないので浸透圧が上がらず、卵の中でも溜め続けられるそうだ。

なのでおおくの鳥類や爬虫類は人間のようなおしっこをせず、糞と一緒に半固形物として尿酸を捨てている。鳥の糞はよく見ると黒い部分と白い部分があって、黒い部分が便、白い部分が尿酸の塊である。

この仕組みは陸上生活にとてもよく適応している。尿酸にすれば大量の水で溶かす必要がないので、水を節約できるのだ。陸で水は貴重なので、このメリットは大きい。少なくともアンモニアの排泄においては、哺乳類より鳥類や爬虫類の方が陸上生活に適応していると言えるだろう。

ちなみに糞と一緒に出すので穴もたいてい一つしかない。総排出腔といって糞・尿・卵・精子すべてここから出す。便利だ。人間も総排出腔になれば、社会の窓がいらなくなる。開けっぱなしにしがちな私は、人間が総排出腔を獲得できることを強く願う。

ついでにうんちについても学んだ

我々は口から食物を入れて、消化管で消化・吸収し、残ったものを便で出す。これを専門用語でうんちという。

これまで便は消化できないモノ、消化し損ねたものと思っていたが、便の大部分はそのような食物の残りカスではないそうだ。半分くらいは腸内細菌の死骸(生きてるのもいる)で、残り半分のかなりの部分は消化管の表面から剥がれ落ちた細胞とのこと。食物の残りカスは便の半分もない。食べたものは想像以上に吸収しつくしているようだ。言われてみれば便の色や質感は食べカスといった風ではない。

※腸内細菌:消化を助けてくれたり危険な細菌から守ってくれたりする細菌で、人間の腸にはおよそ1000兆個いるといわれている。人間の体はおよそ40兆個の細胞からできているそうなので、細胞より細菌の方がはるかに多いことになる。そう考えると私の中に細菌がいるのではなく、細菌のまわりに私がくっついているのかもしれない。

余談だが便を出すという行為は、どこでするかによって呼び名が違うようだ。

一般的に屋外で排便することを野糞(のぐそ)と呼び、電車の中など、室内のトイレ以外の場所で行われる場合は、便失禁または脱糞などと呼ばれる。 Wikipedia

  • トイレで行う → 排便
  • 室内のトイレ以外の場所で行う → 脱糞
  • 屋外で行う → 野糞

ということか。

また、登山などアウトドア時の隠語として、雉撃ち(きじうち)・お花摘み(おはなつみ)という用語もある。 Wikipedia

奥が深い。

基本的に故意に他人の敷地などで排便を行った場合は軽犯罪法違反であるが、予想できない渋滞の発生時、トイレのない電車の車内などで突然便意を催した場合などは、やむを得ないとして罪に問われず許されることもある。 Wikipedia

故意でなくとも許されない場合があるということか……?

野糞や便失禁をしなくて済む対策としては、

  • 下痢気味の人は、外出時は予め建物に入ったらトイレの場所を確認する
  • 外出時にアイスクリームなどお腹を冷やす物を食べない
  • 下痢止めを常に携帯する
  • 外出時はおむつを着用する

などの方法がある。 Wikipedia

Wikipediaってこんなお母さんみたいな感じだったっけ。

参考

排便場所による分類 - Wikipedia


残酷な進化論 なぜ私たちは「不完全」なのか (NHK出版新書)

矢野ヒロタ / プログラマー
1988年生まれの会社員。ブラウザで使えるツールを作ったり文章を書いたりしています。役立つプログラミング記事を発信すると見せかけてもっぱら妄想です。よしなに。