HIROTA YANO
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ドラクエ6にみる無職という生き方

ドラクエ6を無職で攻略した。

これは昔ならあり得なかったことである。ダーマ神殿の復活は一番のワクワクどころで、勇者への道筋を描いて心躍らせる瞬間だった。

しかし今となっては私自身が就職している身、朝から晩まで会社員をして、ゲームの中でまで就活することに疑問を感じてしまった。数時間後に控える出社という現実から目を背けるように、私はダーマ神殿を無視した。果たしてニート達で世界を救えるのだろうかと、絶望に近い不安に駆られる。

ところが意外なことに、無職のドラクエ6はヌルゲーだったのである。無職でいると特技は覚えないが、やたらと能力が高いのだ。

ドラクエ6は就職した場合、下級職時代が非常に辛い。右も左もわからぬ新卒社員よろしくボコボコにされ、学生時代に蓄えた先輩風を社会という嵐に吹き飛ばされる。就職すれば強くなるような雰囲気を出しておきながら、実際は異常なまでの能力低下。とんだ詐欺である。

特筆すべきはミレーユだ。

彼女は補助役として僧侶や魔法使いになりがちな女性で、HPも防御も低くすぐ棺桶になるイメージがあった。しかし無職になることで分かったが、本来の彼女はタフだった。HPも守備力も主人公と遜色なく、「せいれいのよろい」を装備しようものなら誰も彼女を傷つけられない。棺桶になる心配もなくスクルトをかけ続ける、まさに鉄の女である。

他の人物も安定していた。主人公は遊び人にしなければ強いし、ドランゴは「はやぶさぎり」だけで兄を装備した弟のように戸愚呂じみてるし、バーバラはルーラが得意だ。

そんなわけで就職するよりも楽に攻略してしまった。就職とはなんだったのか。

「就職しない」という選択肢は過酷な人生の幕開けだと思っていたが、就職こそが自身の能力に制限をかけ、人生を過酷にする罠だったのかもしれない。ノマドやYoutuberなどの個人主義が流行るのは、そういうカラクリなのか。知らんけど。

就職しなければ、所属や肩書といった制限を捨てることができる。最高の力を発揮できる個人という名の自由。しかし自由とは自己責任でもある。所属や肩書といった保護を捨て、自分だけで結果を出さなければならない。さもなくばバーバラのように、馬車でルーラを唱えるだけの存在になるだろう。

制限を受け入れ保護を得るか、保護を放棄し無制限を得るか。ドラクエ6は、そんなことを考えさせられる教訓に満ちたゲームなどではなく就職した方が楽しいゲームだと思います。

ドラゴンクエストVI 幻の大地
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