「伝わる文章」と「伝わらない文章」はなにが違うのか

こと仕事において書いた文章が伝わらないというのは致命的である。「で、結局なにが言いたいの?」とか言われた日には目も当てられない。

私自身は比較的文章を得意としてきたのであまり悩んだことはなかったが、歳を重ねるにつれ後輩に書き方を教える必要が生じてきた。他人に教えるとなると体系的な言語化が求められるので、しっかり考えてみようと思う。

まずは原因を特定する。伝わる文章と伝わらない文章はなにが違うのだろうか。これを突き止める必要があるわけだが、なかなか難しい。「正しい日本語」なら定義もあるが伝わるか否かとイコールではない。

経験則として、形容詞や「てにをは」は間違っていても伝わる。仕事でネイティブではない日本語とよく接するが、問題なく伝わっているのだ。もちろん伝わらないカタコト文章もあるが、間違った文法でなお伝わる文章がある以上、カタコトは伝わらない原因の本質ではない。どうやら伝わるか否かに文法の正しさや語彙の豊富さはそれほど影響しないようだ。

これを踏まえて伝わる文章と伝わらない文章を比較し、決定的な違いを3つに絞り込んだ。3つの「伝わらない原因」である。

  1. 目的が曖昧
  2. 一文が長い
  3. まわりくどい

前提:ビジネス文書と物語

前提として、この考察は全てビジネス文書に限定した話である。ビジネス文書とはなにかと言えば、ついさっき私が勝手に決めた定義である。私の勝手な定義によると他人に読んでもらう文章は大きく2種類あって、「ビジネス文書」と「物語」に分けることができる。というか分ける。

  • ビジネス文書:設計書や議事録、プレゼン資料など「読みたくないけど読まなきゃいけない文章」
  • 物語:小説やエッセイなど「読まなくていいけど読みたい文章」

ビジネス文書と物語では目的がちがう。目的がちがうということは書き方もちがう。ここに罠がある。

日本の義務教育はなぜかビジネス文書の書き方を教えてくれず、物語用の書き方である「起承転結」ばかり教えてくる。そのせいで起承転結を唯一無二の文章術と思い込んでいる人が多いように見えるが、こんなもの小説家にでもならない限り一生使わない。物語用の書き方でビジネス文書を書いたら、伝わるわけがないのだ。

以上を踏まえて3つの原因とその改善案を検討する。

① 目的が曖昧 → 「誰に何を伝えたいのか」を明確にする

伝わらない文章の多くは、なにを伝えたいのかを本人がわかっていないようだ。言葉にするとアホかという気もするが、意識してみるとここが曖昧になっている場合が非常に多い。私自身も陥いっていることがあって驚いた。

ビジネス文書を書くときは意識的に目的を明確にするといい。

では目的とはなにかというと、たいていは「誰が読むか」「何のために読むか」の2つで表せる。
例)○○さんに××を知ってもらう(やってもらう)ための文章。

もしどうしても目的が見つからない場合、その文章はおそらくいらない。

② 一文が長い → 一文を短くして主語と述語を明確にする

一文が長いと伝わりづらいようだ。というか読む気が失せる。文とは句点(。)で区切られた一続きの言葉のことである。

言葉の単位の説明。「文章」「段落」「文」「文節」「単語」がある。

伝えるのが目的なら一文を短くした方が無難である。何冊か文章力の本を読んでみたが、これについては多くの本が指摘していた。

試しにめいっぱい一文を長くしてみる。

私は一文の中に複数のトピックを詰め込むと、主語と述語の関係がわかりづらくなり、主語と述語がわかりづらい文は、読み手に負担を与えてしまうため、一文を短くすることを推奨する。

ふむ、わかりづらい。というかうざい。同じ内容で一文を短くしてみる。

私は一文を短くすることを推奨する。一文に複数のトピックを詰め込むと、主語と述語の関係がわかりづらくなるからだ。主語と述語がわかりづらい文は、読み手に負担を与えてしまう。

少なくとも私にはわかりやすくなった。うざさも薄れた。理由は例文に書いた通りである。

③ まわりくどい → 結論から書く

ビジネス文書は結論から書き、経緯や補足は後に書く。

  1. 結論
  2. 理由
  3. 具体例

内容が多岐にわたる場合は、複数の章に分けたうえで総論もあると素敵になる。

  1. 総論(文章全体の結論/目的)
  2. ○○○について
    1. 結論
    2. 理由
    3. 具体例
  3. △△△について
    1. 結論
    2. 理由
    3. 具体例
  4. まとめ(総論で足りるなら無くてもいい)

なぜ結論から書くのか、それは読者が「読みたくないから」である。残酷な事実だが、僕たち私たちが頑張って書いた文章は嫌々読まれている。読者は文章を読みたいのではなく結論を知りたいのだ。

これこそがビジネス文書に起承転結が向かない理由である。起承転結はその名の通り結論が最後にあるので、最初から最後まで読まないと話が分からない。物語ならそれで妥当だがビジネス文書なら地獄。読みたくもない文章が終着点も示さず延々と続く、そんな拷問を読者にしかけてはいけない。

あとがき

他人に教えるときはこの3つを伝えることに落ち着いた。とはいえ私は文章のプロでもなんでもないので、できれば『論理が伝わる 世界標準の「書く技術」』という本を読むよう勧めている。パラグラフライティングという世界標準の書き方を、パラグラフライティングで書いた文章で教えてくれる良書。

論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)
論理が伝わる 世界標準の「書く技術」 (ブルーバックス)